メディアの人から学んだこと「ジブリ鈴木敏夫インタビュー」ができるまで
8/1講談社にて、スイッチオンプロジェクトの成果発表が催されます。その中の展示物のひとつとして「鈴木敏夫インタビューの記事ができるまで」を来てくださった方に見ていただこうと決まり、現在動いています。
私のような取材経験のない者が、いかにしてgooニュースで掲載されるできるレベルの記事を書いたのか。デスクのアドバイスなども織り交ぜつつ、変化を楽しんでいただけるような展示にしたいと考えています。
本日は頭の整理のため、記事が出来上がるまでの過程を簡潔にまとめておきます。
「ジブリ鈴木さん記事」公開までの流れ
1.企画書作成
の4つを軸に、企画書を作成した。1泊2日の合宿の最中に練り上げて、デスクに提出。OKが出た人からアポ取りへ進む。
合宿では企画書を書く以外に、「他己紹介アクティビティ」を体験した。これがのちのち非常に活きた。そこで学んだのは、
スイッチオンプロジェクトの合宿に参加しました - ねとぽよエージェント @comajojo
- 自分の持っている情報の幅でしか相手と向き合えない
- 相手を知るためには、手口をたくさん持つことが必要
- 相手に興味を持つことが大事
- 相手に興味を持たないと、質問が出てこない
- 何に対してでも興味をもてることが、ライターの資質
ここで、どれだけインタビューが難しいかを知った。鈴木さんと会うまでの数週間、鈴木さんや鈴木さんの周りのことを研究し、自分と向き合い続けた。
2.アポ取り
まずジブリの広報宛にメールを送り、一週間待った。反応がないので、デスクと相談した結果、鈴木敏夫さん宛で手紙を送ることに。送った。すると、プロデューサー室の方から電話があり、アポ取りが完了した。
電話を受けたときに舞い上がってしまって、こちらの意向がうまく伝わっていない気がしたので、FAXで取材意図を伝える。すると、電話があり、「楽しみにしています」とのこと。本番まで1週間。
3.情報収集
企画書を書き終えた段階から情報収集をスタートさせた。鈴木さんに関するもの、例としては、
- 著者が鈴木さんの本(『仕事道楽』、『映画道楽』)
- 鈴木敏夫を描いた本(『ジブリマジック』id:reikonさんに貸していただいた)
- 鈴木さんが関わった映画(ジブリ作品、『立喰師列伝』などの押井作品)
- 鈴木さんに影響を与えた本・映画・音楽
- 鈴木さんを取り巻く人・環境について(徳間書店、宮崎駿、大塚康生、押井守、etc...)
- ラジオ番組「ジブリ汗まみれ」
- 「プロフェッショナル仕事の流儀」(鈴木敏夫出演の回、宮崎駿出演の回)
- 「もののけ姫はこうして生まれた。」
- ネット上ですでにあるインタビュー
などなど。その他、社会学の本を読んだり、堀田善衛の本を読んだり。情報収集のベクトルは鈴木さんを向いたり、自分を向いたりだった。
4.質問案作成
アポ取りの前に一度質問案を作成した。が、なぜかうまくいかない。全体ミーティングでのデスクからの指摘、
- その質問が聞きたい一点に向いているのか
- 相手を不安にさせないように地図を
- ピッチャーが球種を持つように、様ざまな切り口を
- 討ち死にしないテクニック
を参考に、情報収集で得たこともあわせながら質問案を深めて行った。予想外の言葉を引き出すために大事な作業。ここでも鈴木さんを考えるだけでなく、自分を見つめる必要がある。
インタビューは記事を書くための材料だから、文章の書き方の本を読んで逆算してみた。どんな質問をしておいたら書きやすいか考えた。
いい意見を出す人は、「問い」も深い。「問い」が浅薄だと、意見もそれなりになってしまう(山田ズーニー『伝わる・揺さぶる!文章を書く』より)
インタビューにおける質問の立て方 - ねとぽよエージェント @comajojo
例えば↑の部分を読んで、「なるほど、質問が良ければ、良い意見が聞けるのだなー、で良い記事が書けるのだなー」と考えたり。
5.インタビュー本番
流れに身を任せ、たまに軌道修正をした。
鈴木さんの悩みは私の悩みでもありました。実感を持って、相槌を打つことができました
インタビューが終わりました - ねとぽよエージェント @comajojo
距離が近すぎるかもしれない。適度な距離がないと、記事は書きにくい。思い入れが強いと、客観性に欠け失敗することがある(テレビの特集でよくみるなー)。個人的には渋谷陽一さんのような対決型のインタビューが好きなので、comajojoのやり方はどうだろう・・・・・・と思わないでもない。
6.文字お越し起こし
1回聞いて、文字お越し起こし。細かいところは気にせずドンドン打ち込んで、即座にデスクたちへメール。
7.構成
全体ミーティングで構成の仕方を学ぶ。
良い記事とは
- 読者にとって面白いことが書いてある
- 取材相手の一方的な話でなく、客観的に見て説得力のあることが書かれている
記事のこと。なので、編集する際には「読者の関心は何で、どう説得的に書くか」をまず考えるべき。
「編集」で「読める記事」にする - ねとぽよエージェント @comajojo
- 読者の関心を考えるのは、そのままでは難しい
- 「自分が伝えたいことは何か?」を先に考えるといい
- 「伝えたいこと」と「読者の関心」を行ったり来たりしよう
これを受けて、記事執筆へ。
8.執筆
初稿は味気ないものになってしまった。習ったフレームワークを使うことばかりに意識がいって、インタビューの面白い部分(デスクがいうところの「ボーイミーツマン」など)が抜け落ちた。
二稿、三稿、四稿とデスクのアドバイスを受けて、自分なりにアレンジしていった。デスクの編集によって、だんだんと読める文章になるなぁと実感。
9.藤代さんの最終チェック
webで読まれる文章にするために。プログラムディレクターである「ガ島通信」藤代さんの手直しが入る。
文章は最後まで読まれないと悔しい。「あとで読む」を付けられたら、本当に悲しい。が、ネットユーザーは少しでも面白くないと、読み進めてくれない。「読者を最後まで読ませる技術」「読者を飽きさせない工夫」を藤代さんの手直しから学んだ。ノウハウではなく、技の領域。
10.鈴木さんのチェック
出来上がった記事を鈴木さんにチェックしてもらう。
ここで重大なミスをしたのが、最終原稿ではなく、ひとつ前の原稿を鈴木さんに送ってしまったこと。鈴木さんが一度直してくださったのに違う原稿だったため、もう一度頼むことに。鈴木さんは速攻で直してくださった。凄い。その上、直した部分は漢字間違いだけだった。ご自身の発言は一切変えず。凄い。
11.gooニュースで公開
- 宮崎駿を見出した男・スタジオジブリプロデューサー鈴木敏夫に会いに行く(上) 「ペタッペタッ」とやってきた(gooニュース) - goo ニュース
- 宮崎駿を見出した男・スタジオジブリプロデューサー鈴木敏夫に会いに行く(中) 編集長も社長も面倒くさい(gooニュース) - goo ニュース
- 宮崎駿を見出した男・スタジオジブリプロデューサー鈴木敏夫に会いに行く(下) 宮崎駿に先回りしたい(gooニュース) - goo ニュース
公開されると、twitterやmixi、ブログで宣伝。gigazineに取り上げられたり、id:otsuneさんがtwitterで紹介してくださったりと、有難い反応があった。
12.感想を読む
はてなブックマークコメントや、ブログ上の反応を読む。goo宛や藤代さん宛に送られたメールも拝見したり。自分宛にも1通メールが来て嬉しかった。
13.反省
もっと良い記事にできたはず。民俗学者の本を読んだりして、取材力・構成力・筆力を向上中。
よろしければ8月1日の講談社にお越しください
以上、記事ができるまでの経緯を簡単にまとめてみました。8/1の展示では、具体的な事例で変化をお見せできるように現在作業中です。よろしければご参加ください→「「ジャーナリストへの挑戦、記者と学生の127日間」申し込み受付開始! - 日本ジャーナリスト教育センター学生運営ブログ(旧ブログ)」
- 第1部 14:00-15:30
- プロジェクトの概要説明 プログラムディレクター:藤代裕之
- スイッチオンPJの趣旨説明 デスク:坪田知己(日経メディアラボ所長・慶應義塾大学教授)
- 各賞の発表
- ワークショップ『他己紹介アクティビティ』 デスク:川上慎市郎(グロービス経営大学院准教授)
- 第2部 16:00-18:00
- デスクによるシンポジウム
- 司会 河井孝仁(東海大学文学部広報メディア学科准教授)
- パネリスト 戸塚隆(講談社 ジャーナル・ラボ部長)、大野伸(テレビ局勤務)、野田幾子(ライター/エディター)
- 今後のプロジェクト展開について プログラムディレクター:藤代裕之
- 閉会の挨拶 デスク:磯野彰彦(毎日新聞紙面審査委員長)