社会に絞め殺される者たちの恐怖〜映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』

試写で。昨年のカンヌ国際映画祭パルムドール作品。
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映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』公式サイト
ケン・ローチ作品、カンヌ最高賞に - BBCニュース

  1. 最初はおじいさんの滑稽さがちょっぴり切なく面白いが、より社会的弱者なケイティの登場によって、だんだんと、登場人物たちが”社会”によって絞め殺される。マジで、恐怖。感動作として売られているみたいだが・・・、自分にとっては、これは”見えていない現実を刮目せよ”という恐怖映画だと思った。ある意味『闇金ウシジマ君』。観終わると、非常に疲れ、社会について考えなくてはならない、と感じさせられる。
  2. 感情の行き交いをあえて抑えめに、あるときには省略して描いていることで、観ている者はそこに感情と頭を持っていかれる。社会問題へ関心を寄せる手法を、映像表現としてやっていた。冒頭の2分くらい続く”黒”も、「一体なんなの?」と観客へ積極性を要求したのだろう、私はうまくハマった。
  3. イギリスの貧困を扱った映画だが、日本にもあること。涙は流れるかもしれないが、それは、感動ではなく、恐ろしさと惨めさと悔しさからだと私は思った。
  4. 私個人としては…正直にいうと、バカみたいな感想だが、貧しくなりたくない、と第1に思った。この映画は、制度によって貧困にハメられた者たちのあがきを描いていくが、それを見ながら、必ず自分はそうならないようにしたい、制度をハックしたいと思った。第2に、自分の身の回りの大事なひとたちを、貧困の憂き目に合わせられないようにせなば、と思った。そのためには、行政のあり方をしっかりと見極めない。一つ目と二つ目の動機をもとに、見えにくい現実を捉えたいと思った。
  5. 見るものを”動かす”ことに焦点を絞った『わたしは、ダニエル・ブレイク』、必見です。ちなみに、製作はBBC、いろんな声のあげ方があるな、と勉強になった。